稲盛和夫さんの『心。』を読みました。
心。
稲盛和夫(著)
サンマーク出版
稲盛さんの経営哲学、いや、人生哲学が垣間見える大変面白い本でした。
この本の中で「利他」という言葉がたびたび出てきます。詳しくはぜひ本を読んでいただきたいのですが、この本を読んで「利他」とは「自律」「自己組織化」「自己管理」とつながるものなのではないかと思い、その考えをまとめるべくブログを書いています。
僕もスクラムマスターの端くれ、メンバーの自律やチームの自己組織化・自己管理には興味があります。大事なのは利他の心。この気づきを明文化してみます。
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自律と自己組織化・自己管理
例えばgoo辞書には、次のように載っています。
自律(じりつ)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。
対義語は「他律」であり、「自らの意志によらず、他からの命令、強制によって行動すること。」という意味だそうです。
「自律」は個人に使う言葉ですが、これをチームに向けて使えば「自己組織化」「自己管理」でしょう。
自分自身で立てた規範が自律をよくないものにする可能性がある
問題はこの「自分自身で立てた規範」をどのように立てるのか、であるように感じます。この規範が周囲にとって好ましくないものであれば、自律している状態ではあるものの全体として好ましくない状態が生まれてしまいます。
RSGT2023でエセ自己組織化に関する発表がありましたが、まさに自分たちで立てた規範自体に欠陥がある状態なのだろうと思いました。
利他の心を以て規範を見つける
「利他」は『心。』の中で次のように述べられています。
なかでも人がもちうる、もっとも崇高で美しい心──それは、他者を思いやるやさしい心、ときに自らを犠牲にしても他のために尽くそうと願う心です。そんな心のありようを、仏教の言葉で「利他」といいます。
そもそも、「利他」という言葉の意味は実にシンプルです。「他を利する」──すなわち「自分のため」は後まわしにして「他人のため」を優先する。隣人のために何ができるかを考え、自分がなしうるかぎりのやさしい行為をしてあげる。たったそれだけのことで、けっして大仰なことではないのです。
自分自身の立てた規範が周囲を困らせるという問題は、その規範が利他の心を以て立てられていないからなのではないかと気づきました。 自分たちはそれがしたいと思っているから、アジャイル開発とはそういうもののはずだから、それをやっている自分たちはすごいと思えるし満足感も得られそうだから。 利己の心で立てた規範は、周囲との温度差を産んでしまいます。
利他の心を以て、つまり他者のためを思って立てた規範であれば、こういった問題は起こらないのでしょう。
他は多
利他の他を考えると、様々な他があることに気づきます。
まず、「他」とは「自」ではない部分です。つまり、「自」をどこに据えるかによって、「他」もまた変化します。そしてその「他」とは1つではなく複数であることに気づくでしょう。
「自」を「自分」と捉えれば、チームのメンバーや自分のマネージャー、仕事で関わる人、会社、家族…などが「他」として浮かび上がるのではないでしょうか。 「自」を「自チーム」と捉えれば、「他チーム」「他部署」「顧客・ユーザー」「社外」などが「他」になってくるでしょう。
このように「他」をより具体的に意識することで、よりふさわしい規範が見つけられると感じました。
自も他
利他というと僕は少々「自己犠牲」のニュアンスを感じてしまいます。僕はあまり自己犠牲というものが好きではありませんので、「他」に「自」を含めて規範を考えたいと思いました。利己のように自分を最優先するのではなく、他と公平に自を扱うということです。
7つの習慣の1つに「Win-Win or No Deal」があります。自己犠牲では「Lose-Win」になってしまい、「No Deal」にしたほうがよいでしょう。同じようなことは三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)でも言われていることです。
まんがでわかる 7つの習慣
フランクリン・コヴィー・ジャパン(監修)
宝島社
まとめ
いい本でした!